言語学の分野で「語源論」というのがある。
「神」は上
のほう、つまりカミから来た、みたいに、
あることばが元はこの語に由来するとか、
こんなエピソードでできた、などと、どんどん辿っていくやつ。
邪馬台国の場所を考えるような面白さもあるし、
好きな人は入り込むと帰って来られないらしい。
富士の樹海みたいな話だ。
迷って帰ってこられないのも困るので、
今日はそれに近い「命名論」の方でちょっと。
こっちは、どうしてそういう名前をつけるのか、
どうして名前をつけるのか、といったことをあれこれ考える方。
身近なところで、アパートや集合住宅の話から。
あんまり日本特殊論とかは言いたくないけど、少なくとも
日本は集合住宅に名前をつけるのが好き![]()
ということは言えそうな気がする。
自分が知る限り、欧米にはこういう例は少ない。
前に北シドニーで住んでいたアパートは、入り口の脇に噴水
があったので
The Fountain
という名前がついていたけど、現地の不動産屋さんによるとこういう例は稀とのこと。
確かに、通りと番地が分かれば「それは、ここにある」と認識されるし、
郵便も届くから、それ以上の個としての性格づけをすることはないかもしれない。
一方、日本では集合住宅に名前をつける。必ずつける。
しかも、カタカナ語で。
かつてはアパートなら、学生のときに住んでいた東池袋の「米山荘」みたいに、
「家主+荘」という名づけが普通だった。
でも「〜荘」は木造の古いアパートを連想させるようで
今ではカタカナ語の名前がほとんどだ。
じゃあどうして、集合住宅に名前をつけるのか。
日本では集合住宅を持つためには、土地持ちのお金持ち
でなければならない。
せっかく手に入れた以上、その所有者、つまり大家さんは、
それが単なる住宅以上の何かであることを確認したいし、示したくなるのだろう。
高価であればあるほど名が大事になるというのは、
・めったに出ない大きさのダイヤモンドが「真紅の貴婦人」
などと別名で呼ばれる
・豪華客船
や大型ヨットに「クイーン・エリザベス」「スーパーオーシャン」などと名前がつく
ことからも伺える。
ただしこの説明では、名づけをする理由は見えても、なぜカタカナ語なのかの理由は分からない。
カタカナ語である理由は、やはり「高級そうに見える」
しかなさそうだ。
昔、北青山の裏手に、防火防災の観点からは絶対に「あってはならない」
古い古いアパートが建っていて、これには
ジョセリーヌ三越北青山
という凄い名前がつけられていた。
誰だよ、じょせりーぬ、って? ![]()
それにどう見ても、三越の社員寮ではなかった。
「三越」はもちろん、あの百貨店のブランドイメージを借りてきたのだろう。
日本のブランド名のかなりは世界中で通りがいいから、
この命名法は、これから日本でアパートを探す外国人向けには、
けっこうアピールするかもしれない。
たとえば「パナソニックホンダ北府中」とか(これじゃベタに社員寮か)。
確かにマンションの名前には工務店や建築会社が英独仏西、
あらゆる欧米語の辞典を片っ端から引いては名づけたような百家争鳴の状態で、
突っ込みどころは満載だ。
それにしてもジョセリーヌはナシでしょ、と思って、ちょっと調べてみたらびっくり![]()
大手のマンスリーマンションの会社が千葉県に建てた一棟には、
堂々と「〇オパレス・ジョセリーヌ」と命名されていた。
じょせりーぬ、って一体何者〜〜?!!
次回は6月25日更新予定です。

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